老人と海を読んで

こんにちは、やなべです。

 

今回は、これまでにない種類の小説を読んでみました。まとめてしまえば、漁師の老人が海で巨大魚と格闘の末に手に入れるものの、寄港するまでにすべて鮫に食べられてしまうという話です。壮絶な三日間の末に老人が得たものは、巨大魚の骨だけでした。老いという主題でこの作品を捉えたとき、老人の境遇は作者のヘミングウェイ自身のそれと重なります。

 

 

老人と少年

メキシコ湾の港町に、小舟で漁をする老人がいました。彼は、若いころに腕相撲大会で一晩中戦い、相手を負かしたという経験をもつ強者です。老人となった今も、全盛期を思わせる強靭な肉体を有していますが、近頃は漁がふるわず、二か月以上釣れていないという有様です。老人を慕う漁師の少年は、当初老人と漁をともにしていましたが、結果が振るわないため、両親から別の漁師の舟に乗せられているのでした。漁の前日、老人はいつものライオンの夢を見ます。

 

巨大魚との遭遇

翌朝、まだ暗いうちに外洋に向けて舟を漕ぎだします。途中、釣れた小型のマグロを餌としてロープを垂らしていたところ、昼すぎに重いあたりがありました。老人はロープを引こうとしますが、びくとも動かず、それどころか魚は巨大な力で舟を引こうとします。巨大魚と老人の戦いが始まりました。魚と老人の膠着状態は夜通し続き、翌日の明け方になり、老人は魚に、死ぬまで付き合うぞと声をかけるのです。

 

巨大魚との戦い

老人は、片方の手でロープを引きながら、もう一方の手で少年がくれたマグロを食べます。そのうち、左手が引きつり手が開かなくなりました。そのとき、魚が一瞬海面に姿を現し、その大きさが舟よりも大きいことが分かります。こうしているうちに、夜が訪れます。老人は両手にロープを巻き付けて仮眠をとることにします。夢にはまた例のライオンが出てきましたが、ロープが引かれて目が覚めます。

 

翌日の日の出のころに、魚は舟の辺りを周回し始めます。ここからが本番だと意気込んでロープをじわじわと引き寄せると、魚は少しずつ海面に近づいていきます。老人の体力は限界に近づいていました。魚はついに海面に上がってきます。老人は、魚を突き刺す銛を獲物の心臓に向かって、渾身の力で突き刺します。獲物は死に、血が流れ出しました。老人は獲物を舟に括り付けて、港に向かい進路をとります。

 

鮫の襲来

時間は正午ごろになっていました。獲物から出ている血につられて、今度は鮫が襲ってきます。鮫は獲物の肉にかぶりつき始めます。老人は、鮫に向かって銛を突き刺し、撃退しますが、また次の鮫がやってくるのです。そのうち、銛を鮫に奪われ、今度はナイフを付けたオールを突き刺します。そうしているうちにも、獲物の肉はどんどん鮫に奪われていきます。ナイフが折れてしまうと、梶棒で応戦します。夜になっても鮫は獲物を食いちぎり、ついには全部食べつくしてしまいます。

 

再び老人と少年

老人は、ついに負けたと思います。港に帰り着くと、マストを担ぎ自分の住む小屋に戻り、寝てしまいます。翌朝、少年が小屋を訪れると、老人はまだ寝ていました。老人の手の傷を見るにつけて、少年は泣けてきました。その後、熱いコーヒーを老人のもとに持っていき、老人の目が覚めるまで付き添うのでした。目を覚ました老人は、少年とまた漁に出ることを約束して、また眠ってしまいます。また、いつものライオンの夢を見るのでした。

 

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冒頭でも書いたように、この小説を通して、老いや衰えとどう向き合うかを考えさせられます。時系列は前後しますが、作者のヘミングウェイもまた、航空機事故で強靭な肉体を失ったことにより、精神を病んで自殺してしまうのですが、これまでできたことができなくなるということは、誰もが遭遇する課題です。私も、老いではありませんが統合失調症という病気で以前のようには働けなくなり、もどかしい思いをしています。

 

自分はもっとできるはず、そこに希望を見出して、今までとは違う方法で経験と能力を発揮していくことが未来につながると信じています。老人は、漁での負けを認めたものの、今回は運がなかったとして、また挑戦し続けるのではないでしょうか。今度は少年に漁を教える立場として、まだまだ現役として、少年と一緒に漁に出て欲しいと願うばかりです。