古都を読んで

こんにちは、やなべです。

 

先日、川端康成の雪国を読みました。川端康成の小説は、日本語がきれいで音にしても非常に美しく、また、通常と異なる独特の語句の組み合わせから、物語の風景が鮮明に思い浮かぶという体験をすることができます。読み進めながら、このような日本語の使い方ができたら、なんて素敵なのだろうと思います。今回は、雪国と並ぶ川端康成の代表作である古都を紹介します。

 

 

佐田千重子は、京都にある老舗呉服屋の娘です。千重子には、生まれたあとすぐに捨てられたところ、現在の両親に育てられたという経緯があります。千重子の育ての父親である太吉朗は、店の経営を部下に任せ、自分は嵯峨の尼寺にこもり、娘にあげる帯の下図を描いていたのでした。その下図をもとに帯を織るのは、織屋の大友宗助の息子の秀男でした。秀男は、千重子に好意を寄せていたので、彼女の帯を織ることが嬉しく、勢いづいています。

 

ある日、千重子は友人と北山を訪れて杉を見ていると、そこで作業をしている自分によく似た娘を発見します。そのときはあまり気に留めていなかったのですが、祇園祭の日に偶然の再会を果たします。彼女の名前は苗子といい、千重子の生き別れの妹だったのです。苗子は、狼狽する千重子と別れたあと、秀男に声をかけられます。苗子を千重子と勘違いした彼は、苗子に新しい帯を織ることを申し出ます。

 

秀男は新しい帯の図案を持って、千重子のもとを訪れます。千重子は、自分には生き別れの妹がいて、祇園祭の日に再会したこと、秀男が帯を織ると約束したのは、その妹の苗子であったことを伝えました。そのうえで、苗子のために帯を一本織ってほしいとお願いします。千重子は、再度北山を訪れて、帯のことを苗子に伝えます。最初、苗子は千恵子の身代わりではないので、そんな帯は受け取れないと言いますが、千恵子の熱意に押されて承諾します。

 

そして、苗子の帯ができあがります。秀男は、帯をもって苗子のもとを訪れます。苗子は、千恵子の身代わりはもう嫌だと言いますが、秀男は約束だからと言って帯を渡した上で、時代祭に苗子を誘います。苗子は、こうして千恵子との交流が深まっていくことは、千重子の愛情が身にしみただけに、慎むつもりでいるのでした。苗子は、千恵子の存在が知れただけで十分で、帯は一度きりありがたく受け取ると言います。

 

時代祭が終わって数日後、苗子は千恵子に電話をかけます。苗子は、千恵子に聞いてもらいたいことがあると言います。千恵子が苗子のところに行くことになりました。苗子に会う日になり、千恵子が出発の準備をしていると、太吉郎は、苗子に困ったことがあったらうちで引き取ると言います。千重子は泣いて感謝します。

 

苗子に会うと、実は秀男に結婚を申し込まれたと言います。苗子はすぐには返事ができないのでしたが、これは千重子の身代わり結婚であると言います。それに、苗子が織屋の秀男と結婚したら、そのつながりのある呉服屋の千重子にも変な噂がたったりして、迷惑がかかると言います。帰り道、千重子は苗子に、うちに泊まりにくるように誘います。苗子は困惑しながらも、一晩だけ千重子と泊まりたいと言うのでした。

 

約束の夜になり、苗子は千重子のうちにやってきます。千重子は、うちにずっといてくれることはできないのかと聞きますが、苗子は千重子の周りの環境に自分はそぐわないと言って断り、たった一度だけ千重子の家にきたのだと言います。苗子は、一度だけ千重子の布団に入りたいと言うので、千重子は苗子の布団に潜り込みます。翌朝、早くに苗子は北山に帰ると言い出します。千重子は、また来てくれるように言いますが、苗子は首を振ってそのまま振り返らずに帰るのでした。

 

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生き別れになった姉妹が出会い、そして別れていくまでの過程を、京都の様々な行事と情景にのせて描いた作品でした。苗子は、千重子の幸せを願うからこそ、自分のせいで千恵子に良くない噂が立ったり、生活が脅かされることを一番に恐れるのでした。切なくも、苗子の芯の強さが魅力的に映ります。それと同時に、親に捨てられた千重子は京都の中心で、お嬢さんとして育てられたことや、偶然の再会により、苗子を太吉郎は面倒を見るといったことなど、人生は何が起こるか分からない、どんなめぐり合わせによって、どういう風に人生が進むか分からないという、人生の妙のようなものを感じました。